シリコンバレーでおなじみの「アイデアよりも、それを実行することの方が大切」という格言は、表裏一体である。
ビジネスマン/エンジニア/デザイナーとしてノッてる時には「実力さえあれば、普通のアイデアしか浮かばない俺でも成功できる」と聞こえる褒め言葉だ。
しかし、アイデアは沸いてくるものの、片っ端から手をつけては「やーめた」と言い出すようになると、「俺は口ばっかりで何一つできないダメ人間だ」と思い込んでしまう。
クリエイティブな仕事をする人なら、誰でも一度は後者のネガティブ・スパイラルに陥ることはある。俺はデザイナーだが、先輩からこないだダメ出しをされた。
「お前はデザインをするとき、諦めるのが早すぎる。30%くらいの完成度で『このデザインはダメだ』と言うな。ダメなデザインでも100%の完成度まで持っていくんだ。」
その時は「わかりました」と言ったが、正直言って30%でダメだと知ったら、100%まで持っていくモチベーションは残っていない。また一から始めては、次のデザインも30%程度で挫折してしまうのである。
アイデアは次から次へと浮かぶものの、30%での挫折が続く。こんな時はどうすればいいのか。諦めやすい性格を直さないといけないのか。
先週24歳になり、そろそろ焦りだしたので、もう一度解決策を考えてみた。昔の自分の答えと一緒に共有してみる。
- 30%で挫折するパターン
- 30%で挫折しそうになった時の対策 [22歳の俺]
- 30%で挫折しそうになった時の対策 [23歳の俺]
- 30%で挫折しそうになった時の対策 [24歳の俺]
30%で挫折するパターン
縦軸をモチベーション、横軸をプロジェクト完成度として考える。ちなみにここでいうプロジェクトとは、数時間から数十時間で終わらせられるレベルのタスクのことを指す。
まず何かをはじめる時に「すごいアイデア」が浮かぶ。モチベーション急上昇。紙にスケッチを描いたり、Amazonで関連する技術本を買ったり、ブログ記事ならタイトルを決めちゃう。
(ちなみに最近思いついてボツになったアイデアは、「デザインと英語を同時に学べるサービス」「Twitter Bootstrap 2を使った履歴書作成サービス」などである)
走りながら考えることは重要だよね。というわけで、とりあえずスタート。
しかし、思いのほかデザインの見栄えが良くなかったり、技術が複雑だったり、自分の文章がヘタクソだったりする。モチベーション、急降下。
最後にはバカバカしくなって挫折。結果、7割引。
では、このジレンマに対して、これまで俺はどんな対策を立てていたのか。
30%で挫折しそうになった時の対策 [22歳の俺]
22歳の後半で大学を卒業、就職したこの頃は責任が少なかった。自分の為に頑張ればよかった。時間的余裕もあった。
だから30%で挫折しそうになった場合の対策は「低空飛行で続ける」だった。やばくなったら、レッドブルを注入。やる気は下がったが、強引に終わらせた。
この対策の問題点は、30%以降のモチベーションが低いため、100%に到達するまで非常に時間がかかったことである。
30%で挫折しそうになった時の対策 [23歳の俺]
23歳になってからは、ベンチャーで働きはじめた。スピードが重要なこの世界では、30%から100%までに時間をかける余裕はない。
だから30%で挫折しそうになったら本当に諦めるか、もしくは30%を「100%ということにする」という手法をとった。
合言葉は”Just Ship It” - アメリカの技術者がよく使うこの言葉、日本語だと「(不完全でもいいから)とにかく出荷せよ」という意味だ。
たとえば100%が機能A, B, Cだったら、「しょうがない、機能Aだけで出すぞ、出さないよりマシだ」ということだ。長文記事を執筆中にペンが止まり、仕方なく内容をツイートでまとめて出すようなものだ。
これはこれで問題だ。30%で終わらせてしまった場合、その後改良をしなければ30%で諦めたのと同じである。顧客にA, B, Cを約束してAしか出荷できなかったら信用を失う。
それでは、正しい解決策はなんなのか。
30%で挫折しそうになった時の対策 [24歳の俺]
というよりは、
30%で挫折しないために [24歳の俺]
注目すべきは、上のグラフはどれも「すごいアイデア」からはじまっているということである。
きっかけは重要だ。何かはじめよう!と思うときは、たいてい頭に豆電球が光るときである。
しかし、「すごいアイデア」がモチベーションを保ってくれる時間は限られている。そして「すごいアイデア」は自分を興奮させるが、興奮から覚めたら一気にモチベーションが下がってしまう。
俺の場合、「これだ!」と思うアイデアの勢いは、プロジェクト全体の30%くらいしか続かないらしい。恋愛もはじめの3ヶ月が華なのと同じである。
だが、プロジェクトを完成させ、夢を実現したいのなら、「俺は諦めが早いから」と言って片付けてはいけない。
すべきことは、逆算することである。
つまり、「すごいアイデア」が30%を稼いでくれるのなら、プロジェクト完成度が70%を超えたときに、「すごいアイデア」を発動させるべきなのだ。
発動させる、というとおかしいが、要はこういうことである。
まず「すごいアイデア」がなくとも、プロジェクトをはじめる。平凡なきっかけでいい。変に期待もしない上、近いうちにすごいアイデアがくるかも! と思えるのでモチベーションを保つことができるし、急降下することもない。自然体である。
完成度が70%あたりまで来たら、とりあえずプロジェクトを放置しておく。「すごいアイデア」が思い浮かぶまで、他のプロジェクトに時間を割いてもいい。
その「すごいアイデア」が思い浮かんだら、一気にプロジェクトを終わらせる。30%のあいだはモチベーションを保てるので、計算上はうまくいくはずだ。
つまり、「すごいアイデア」でプロジェクトを始めるのではなく、「すごいアイデア」でプロジェクトを終わらせるべきなのだ。
すると、いくら諦めが早くても、挫折しないでプロジェクトを終わらせることができる。さらに「すごいアイデア」が必要不可欠なので、クリエイティブな結果を出せるのである。
じゃあ「すごいアイデア」が最初に出てきてしまったらどうするかって? 俺は「そんなの、すごくない」と思い込むようにしている。
実際、プロジェクトが70%の完成度の時に生まれる「すごいアイデア」は、0%の完成度の「すごいアイデア」より遥かに優れている。70%の時のほうが、0%の時より自分の経験・得た情報ともに多いからだ。Facebookの写真タグ機能、Twitterのリツイート機能など、本当にすごいアイデアは最初から出てこないのである。
この手法でちいさなプロジェクトを2個ほどこなしたが、自分でも生産性の高さに驚いたくらいだ。
このブログ記事も、7割ほど書いてどうも分かりづらいな、と思って放置していたときに、「そうか、グラフを描けばいいんだ!」と思いついた。これが「すごいアイデア」かどうかはともかく、おかげでこの記事は下書きフォルダを脱出することができた。
もちろん、「だめなアイデアではじめて、7割も足を突っ込んでしまった結果、3割のターボダッシュでもどうにもならなかったらどうする」という反論もできるだろう。だが、何度もプロジェクトを成功させれば「すごいアイデア」がもっとモチベーションを保てるようになるはずだ。そして冒頭でも述べたように、普通のアイデアもうまく実行すれば成功できると、シリコンバレーの猛者たちが証明してくれている。
結論
挫折するのは諦めやすい性格だからではない。諦めやすい性格を、逆手にとれていないからである。
反対派は橋下市長の目標値の設定よりもプロセスがどうしても気になるらしく、しきりに「言ったこととちがう!」と唱える。ビジネス脳がない彼らは「先に決定がくる手法」についてゆけないのだ。橋下市長に「ついてゆけない」ひとたち。
走りながら考えることが苦手な人は、すごいアイデアでなにかを始めるのではなく、すごいアイデアでなにかを終わらせることを考えてみたらどうだろう。すごく単純な考え方かもしれないが、やってみて損はないと思う。
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